八重さん(20) 、識(17)の頃の話

 

出会ったきっかけは
八重がバイトしていた喫茶店にたまたま行った事で二人は知り合いになった
それからなんとなくしゃべるようになって今では
友達として交流するようになったそんなある日の話

 


テスト期間も終わり俺は八重さんがバイトしている喫茶店に向かう。
カランと音を立てると俺が探していた人物の後ろ姿が目に入りその人物がこちらを振り返る。

「いらっしゃ――おぅ識じゃん テスト終わったのか?」
「終わった終わったーもうテストとか滅びればいいn・・・ってどうしたのその顔」

俺は顔が腫れ上がった八重さんの左頬をさして言う。

八重さんは苦笑いしながらばつ悪そうにけれど軽い感じでいう。

「いやーw失敗しちゃって」

その言葉に また女かと ため息をつく俺だった。


八重さんは自称 イケメンらしい
自分で言うなって思うんだけどでもやっぱり言ってる事は外れてないのか大体誰かとしょっちゅう付き合っている。
何でそんなに付き合いたいのか俺には理解出来ないし理解したいとも思わない。
と言うのも俺はちょっと異性が苦手だったりで…
なんていうのかほら女性のキモチ?ってのよくわからないし なんていうか俺にとって女とは謎の生物ぐらいの存在。
実際女性とお付き合いより今は友達と楽しく遊んでるほうが楽だし楽しかったのもある。
そんなわけで俺は今の所付き合う予定もなければ彼女が出来る予定すら未定なのである。
決して顔じゃない!俺の顔に問題があるわけじゃない! と自分に言い聞かせていると
八重さんがアイスコーヒーを持ってきた。

「お前一人でぶつぶつ言ってるから周りの客が怪しんでるぞ~w唯でさえその眼帯と髪で目立つのに」

そう言われて視線だけを回りに移すと・・・確かに何人かと目線があったが相手は罰悪そうに視線を反らす。

「うっ・・・」
ちょっ途端に恥ずかしくなってきた。

「んで何独り言言ってたんだよ?悩み?」

客からの注文がないのを良い事に八重さんは向いの席に座る。

「別に~今日のテスト思い出してただけ(嘘」
俺はアイスコーヒーにミルクを入れ混ぜる。

「識って嘘が下手だよな~目を見りゃ分かる」
 
お前は占い師か何かか!と思わず吹きそうになったけど 当たってるだけに言い訳できない。
(・・・もういっそアイマスクしたい)
落書き

などと考えてると八重さんが自身の左ほほを指しながら口を開く 

「今回のこれはねー相手の彼氏さんに殴られたやつ」

「いや聞いてないけど」

「あれ?これ気になってたんじゃねぇの?」

いや気になってないと言ったら嘘になるけど八重さんが殴られるなんてしょっちゅうだから俺もいちいち聞いたりしないけど・・・でも一つになった。

「相手の彼氏さんって・・・八重さん男と付き合ってたの?」

俺の真顔の問いに八重さんは爆笑する。
何これ俺変なこと言った?!

「くくk//// まさかその発想w違う違うw俺と付き合ってた女のコの彼氏さんに殴られたって話」

「な・・・るほど」

ちょっと死にたくなってきた。
こんな聞き間違え&異性に興味ないとかいうから俺は同性愛者と疑われるんだろうな(一部に

「でもそれじゃ相手には彼氏がいてその子と付き合ったってこ・・・それ不味くないの?」

「いやー別にそういう相手とも付き合ったことあるし
っていうか俺人妻とも一度経験あるし」


なんという暴露話だ・・・俺は想像を超える発言になんだか気分が悪くなってきたような気がする。

「んな露骨に嫌な顔すんなってw 男なら一度は年上の女性にあこがれるもんだろ?」

ねぇよ。そうだったとしてもそれ(不倫)はねぇよ。
というツッコミを心の中に留めるとにした。


「でもそれじゃ八重さん殴られても当然じゃない?」

「まぁ俺も同意の上でならね」

「?」

「今回は知らなかったんだよ」

「!」

八重さんの話をまとめるとこうだ。
付き合って欲しいといわれて付き合い始めて2週間
彼女の部屋にいた二人の所へ彼女の彼氏という男が急に現れて八重さんは突然殴りかかられたらしい。
その後聞いた話ではどうやら彼氏との付き合いが上手くいってなく彼の気持ちを確かめる為に
八重さんと付き合いだしたそうだ。

なんとも酷い話だと俺は思う。

「八重さんはその彼女に文句言ったの?」

八重さんは涼しい顔して首を横にふる

何でそんな平然としていられるのだろう。俺は聞いてるだけでむかむかしてくるというか…八重さん利用されただけじゃん。
それなのに怒らずにいるのはやっぱり・・・
「・・・・八重さんその子の事本気だったとか?」

聞いていいものかと思いつつ俺は意を決して聞くことにした。

「・・・半々。っていうかまぁ気付いてたんだよな俺」

八重さんがいつもとは違う表情をするから俺は何も言えずただ黙って待つ。


「出会った最初彼女は後ろめたそうな顔してたっていうかさ。なんていうか誰かに振られたとも言えるし。何かを決意してるっぽい顔もしてたわけ。
俺は彼女が本気で俺の事好きで告白したなんて思ってなかったしさ」

「・・・は? 好きじゃないって分かってたのに付き合ったの?!」

「本当に好きだって奴ってのは目は違うってwwwってお前にはわからないかww」

からかわれている・・・と思った瞬間俺はテーブルの下で八重さんの足を思いっきり蹴った

「いってぇ!!!」
クリティカルヒットしたのか八重さんが若干涙目になった。いい気味だ。


「・・・で?」
俺のジト目でさっさと続きを言えよ視線を送る。

「まぁ何で彼女がそんな顔をしてるのか俺は知らないからしょうがないけど
何かを悩んでるのは分かった。
だから付き合うことにした。」

なぜか自信満々にいう八重さん。
お人好し過ぎないだろうか…俺は呆れてしまう。


「付き合って三日経つぐらいになったらなんていうか彼女がちょっとだけ明るくなっていったんだよ
なんていうか多分これが本来の彼女なんだろうなって思った
でもちょっと寂しそうで時たま携帯をチェックしてたよ

ちょっとずつ俺の事を意識し始めてきたのも目線で分かったんだけど
10日目ぐらいに彼女の携帯にメールが届いてさ あれはきっと彼氏さんのメールだったんだろうね
凄く幸せそうな顔した後に俺の顔をみてちょっと複雑そうな顔してたから」


「んで2週間後に殴られたってわけ?
結局八重さん 殴られ損じゃん?」

ムスっとした顔でそういうと八重さんがまぁまぁと俺の肩を叩く。

(いやなんで俺が慰められてんの?!おかしくね!?)

「まぁなんていうか俺としては最初にそれを言ってくれたらもうちょっと上手く協力出来たのにな
っていうのが心残りか?」

「(協力って…)結局その二人はどうなったの?」

「さぁ?」


「さぁって!!?そこまで付き合わされて 八重さんは彼女とは・・・」

「もちろん彼氏さんに殴られてからはそのまま追い出されたから会ってないけど
・・・まぁこれから先も会うことはないと思うぞ!」

ほら。というと携帯のメールをみせてくれる。
最後に彼女とやり取りをしたであろうメール 今までごめんなさい と一言


なんというか…彼女には悪いけど彼女を殴りたくなった←


「というわけで(左ほほ)これは俺が二人を取り持ったキューピットの勲章って事で」

「いやいやいや(殴られぞんのキューピットって!!)」


なんというか俺には縁のない二週間の出来事を聞き終えると
つくづくなんでこんな男と俺は友達なんだろうとか思っちゃったわけで
それと同時にやっぱりこいつはいい奴なんだなぁと思っちゃうわけで


「まぁこの左ほほのおかげか今はまた別の彼女と付き合っているんだけどw」

そう言って八重さんの視線の先を追うとカフェの端の方に可愛らしい女の子が八重さんと目を合わせると
顔を赤くして小さく手を振っていた。

「彼女は俺の事本気で好きっぽいよー
モテる男は辛いわぁ~w」


前言撤回。
誰かこいつをどうにかしてくれと思った俺がいたのだった。