「今まで、本当は幸福であった事に気付かないのは 人だけじゃないのかも知れぬな」

 

 

緑豊かなその場所を誰かが楽園と名づけた。

 

けれど今
楽園と呼ばれた場所は少しずつ灰となり消滅していく。


「・・・これはあたしのせい・・・なの?」

そう言って少女は消え行く場所を共に眺める女性に問う。

一人取り残された孤独感と今までとは違うその楽園の姿に不安の色を隠せない。

 

 

「いや主のせいではなかろう
この結末を迎えることになったのは―――」

 

 

強い風が彼女の言葉をかき消し灰と共に消えてゆく

彼女の言葉に嘘偽りがないのが分かると少女は少しばかり胸を撫で下ろす

 

「けれど・・・これからどうしたら良いの?」

現状への不安は軽減されたものの先の不安はまだ拭えない


「主はどうしたい?」

 

今まで自分の意思で動いたことは何もない。

だからどうしたいと言われて戸惑ってしまう。

 

「あたしは・・・・」

 

この世界を元の楽園にするべき事が正しいのか

それともこのままが一番いいのか彼女には何も分からない。

 

「答えが出せぬなら少しばかり外を出てみてはどうだ?」

 

「外・・・?」

 

「主はここ以外の場所を知らぬのだろう?なら外へ行くといいぞ。外にはここにはない楽しい事が沢山ある。」

 

「楽しい事?」

 

「ここでは味わえない美味で粗悪な食物も味わえる」

そう言って彼女は舌なめずりをしてみせる。

 

「粗悪で美味??」

 

意味の分からない矛盾した単語に少女は首をかしげる。


「それに外に行けば奴らに会うこともあろう」


「!」
それを聞いて彼女はそれまで以上の反応を示す


「どこにいるかお姉さんは知ってるの?」


「・・・さぁどうだろうな?」
今までとは打って変わっていたずらな笑みを浮かべる

きっと彼女は知ってても教えてくれないのだろう
そんな事を知らない少女は残念そうにしょんぼりする

「・・・でも行けばいつか会えるんだよね?」
希望に満ちた顔で彼女を見る目は 既に答えが決まったように見える。


「あたし外の世界へ行く!」


「なら守人が必要になるな」


「・・・守人?・・・お姉さんが一緒に来てくれるんじゃないの?」

 

「我はこう見えて多忙でな それに我を雇うは対価が高いぞ?」

 

対価とはどんな物なのだろうか?少女には分からない話。

 

「だが主は運がいい。今回特別に便利な物をかしてやろう」

 

そう言ってブラックホールの様な空間から一頭のライオンが召喚される

「さて早速働いてもらおうか」

 

そう返すとライオンは当たり前の用に口を開く

 

「あのゲームの賭けがまさかこんな形になるとはナ。

敗北した時据えた覚悟ははなんだったんダ!!!!」

 

吠えた姿はとても勇ましいライオンのようだが内容が内容がその容姿とかけ離れている。

 

「まぁそう吠えるな。我にコマの用に扱われる屈辱は死よりもつらいであろう?」

「全くダ」

否定する事無くライオンは彼女に向かって吠える

そんなやり取りについていけず幼い子は眺め続ける。

 

「そろそろ茶番も終わりにしよう。時間が惜しい。

貴様は聞いての通りこれからあやつを守る番人になれ 我の命令にずっと従うよりは楽な仕事であろう?」


「・・・一体どんな風の吹き回しでこのような者の手助けをすル」
ライオンは彼女の裏を読もうと問いかける


「我にも借りがあるのでな 倍に返してやろうというわけだ」

本当にそうなのかと疑う物の確かめるすべはない。
ここは結局彼女の指示に従うしかなかった。

「・・・所で行き先はどこなんダ?
某が付き添うという事はそれなりに危険な世界なのだろウ?」


彼女は沈黙の後にやりと笑った。


「行けばわかる」


そう言って彼女は両腕を広げ詩を歌うと幼い子とライオンは発生した空間に引きづりこまれ
跡形もなく消えていく。


どこに飛ばされたのか分からないながらも ろくな事じゃないだろうとお先真っ暗なライオン一匹と
行った事もないない外の世界に不安と期待を入り混じらせる少女が一人

 

離れないように寄り添う形で異空間を移動するのだった。